「向精神薬処方適正化宣言」病院のブログ

広島県廿日市市にある精神科病院、友和病院院長が管理してます

たくさんの薬を長期に渡り飲み続けると、病気が増えることがあります

「先生、調子悪いんです」「それじゃあお薬でも出しておきましょう」

よくある会話です。

「先生、まだ調子悪いんです」「それじゃあお薬を追加してみましょう」

そうやっていつの間にかお薬が増えて行きます。

 

長期に渡り向精神薬を服用すると依存を生じるばかりか、薬の種類によっては「過感受性精神病」という別の病気を作り出してしまうことがあります。

これは脳で薬が作用する部位である「受容体」と呼ばれるものが、服薬する前より増え、薬に対して敏感に反応してしまうようになった状態です。

こうなってしまうと少し薬を減らしたり、飲み忘れたりしてもすぐに症状が悪化します。

ここでよくある勘違いが、「薬を減らしたから元々の病気が悪くなってしまった、私は薬が手放せないのだ」と短絡的に思ってしまうことです。

さらに厄介なのが、薬の量を元に戻してもなかなか症状が改善しないことです。

以前に飲んでいた薬の量より増え、さらにそのことで過敏性が強まり、最終的には薬が効かなくなるというような悪循環を生み出します。

いくら薬を増やしても改善が乏しい「治療抵抗性」と呼ばれる病状の方の中に、少なからず過感受性精神病の方が含まれていると言われています。

 

なので薬を自己判断で勝手に中止することは非常に危険な自殺行為です。

薬を減らしたい時、やめたい時は、主治医、専門の医師に必ず相談しましょう。

 

 

 

夢を見ないという悩み

最近、複数の患者さんから立て続けに「夢を見なくなってしまいました」という相談を受けました。

ちなみにここでの夢とは睡眠中の夢のことです。

それも皆さんとても残念そうに仰られるのです。

現実の生活では面白いことがないので、せめて面白可笑しい夢でも見たいということのようです。

確かに夢を見るのにお金はいりませんし、自由に夢を見ることができたら最高の娯楽になるでしょうね。

しかし、夢を見るのはレム睡眠の時で、それは眠りが浅いことを意味します。

夢をたくさん見るということは良質な深い睡眠がとれていないことを意味しており、心の健康という点からはよろしくないことなのです。

最近はVR(バーチャルリアリティ)の進歩が凄まじく、現実の境目が限りなくなくなろうとしています。

睡眠中の夢に頼らなくても好きな夢が見られるようになるようになる時代が、間もなくやってくるかもしれません。

 

 

 

私は病気じゃない

 精神科の診療において、患者さんが、自分が病気であると認識する「病識」に関する問題が浮上することがあります。

 通常、気になる症状があったり、検査で異常が見つかったりして、病気であると診断されます。

 そしてその結果を受け入れ、治療契約が結ばれ、治療を受けるのですが、精神科の病気の場合、必ずしもそうは行かないことがあります。

 その言動、表情など、周囲から見て明らかに調子が悪そうなのに、患者さんは自分は病気ではないと否定され、受診を拒まれることがあるのです。

 精神科の診断がどのようなプロセスで行われているかご存知でしょうか?

 話を聞いて、うつっぽいから適当に「うつ病ですね」とか言っているわけではありません。

 患者さんからお聞きした話から、症状を拾い、それを診断基準に照らし合わせて病名を確定しています。

 細かいところは、それぞれの医師の裁量もありますが、ともかく精神科医なら知っている、きちんとした診断基準があるのです。

 しかし、「じゃー病気のメカニズムはどうなの?」と言われると、そこが精神科の弱いところで、客観的なデータとしてお見せすることができません。

 様々な仮説があります。

 同じ様に見えるうつ状態を呈していても、恐らくメカニズムは人それぞれ同じではありません。

 なので仕方なく、たとえば、これとこれとこれの3つ以上の症状があったら○○症と診断しましょう、などとしているのですが、じゃー2つだったらセーフですね、病気じゃないですねと言われたら返事に困ってしまいます。

 たとえ2つであっても患者さんが苦しんでいたらやっぱり病気として治療した方がいいと思います。

 しかもその診断基準は定期的に改訂され、以前は病気として診断されていたものがそうでなくなったり、またその反対もあったりします。

 症状を拾う医師の基準は主観的な感覚ですし、人により幅があります。

 患者さんがその症状をうまく表現できなかったり、あるいは意図的に隠したり、嘘を吐いてしまうようなことがあればお手上げです。

 ある意味それくらい不確実な要素がある中で診療しているのです。

 それじゃあ病名をつけるなんて意味ない、いかさまだ、ということでしょうか?

 私は病名にこだわらなくてよいと思っています。

 病名は必要に応じて利用するもの、道具の一つと割り切る。

 一番大事なことは目の前の患者さんの状態が改善すること。

 そのために病名があった方がよければ使いましょう。

 特に病名が必要なのは、保険診療をしたり、病気に関する統計を取ったり、病気についての研究を進めたりする時です。

 「私は病気じゃない!」

 それでいいと思います。

 ただ苦しい時は素直な気持ちになって相談されてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

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